あたりまえブログ

凡事徹底をテーマにしている中小企業の後継者が「大学時代の自分に伝えたいこと」を書いています。

M&Aの専門家が教える企業の「価値の本質」の見抜き方

バフェット・コード(@buffett_code)氏が推薦していたので、読んでみました。 

 

本書は、M&Aの専門家である山口揚平氏が、「会社の本質的価値を見抜く方法」を9つの事例を基に説明しています。なので、財務・会計や企業分析に疎い方でもシンプルな図表と文章で入り易いと思います。

 

私もこれまで自信がなかった財務に関する知識がクリアになりました。

[目次]

 

企業の本質を見抜く2つの武器

山口氏は新米時代にクライアントからの一言に衝撃を受けたと言います。

投資をするにあたり、我々が知りたいのは2つだけだ。1つは、この会社を動かすメカニズム、つまり会社の価値の源泉は一体何かということ。もう1つは、この会社の妥当な"値段"である。それだけだ

M&Aのプロには、「目には見えない」価値の本質を見抜く修練を積むことが要求されます。では、M&Aのプロは、その価値の本質をどのように見抜くのでしょうか?

 

M&Aの現場では、企業の価値の根源を見抜く作業デューデリジェンス」(企業精査)と呼び、企業の価値を算定する作業「バリュエーション」(企業価値評価)という。

 

本書ではM&Aデューデリジェンスやバリュエーションというよりも、

(1)フレームワークを活用した要素分解

(2)投資家としての企業分析

に重きが置かれています。

 

因果のマトリクス

山口氏が「因果のマトリクス」と呼ぶ図があります。

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本マトリクスは縦軸を原因・結果、横軸を過去・未来の4つの領域に区切られています。4つの領域のうち、左上の領域①「過去の結果」だけが私たちに与えられています。しかし、私たちが知りたいのは、右上の④「将来の結果」です。

 

まず、手元にある結果をもとに、それがどのような「過去の事業構造」(領域②)によって生み出されたものなのかを見極める必要があります。これを「分析」と呼んでいます。次に、この事業構造は、今後どのように変化するのか「洞察」する必要があります。

 

この分析と洞察の作業を合わせて、デューデリジェンスと位置づけます。そして、洞察された「将来の事業構想」(領域③)がもたらすであろう「将来の結果」(領域④)を推計することバリュエーションと言います。

 

つまり、バリュエーション(企業価値評価)を行うためには、過去の財務諸表の原因分析と未来のビジネスを洞察するデューデリジェンスの作業が不可欠です。

 

企業を分析する9つの視点

企業を真に理解するためには、企業業績(P/L)だけでなく、その周辺に目を向けるべきだと山口氏は説明します。

 

それを表したのが、バリューダイナミズムという図表です。

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バリューダイナミズムは、P/Lを中心に周辺の8要素を置くフレームワークです。この9領域が複雑に絡み合って、企業の業績や株価が形成されています。

 

本書もこのバリューダイナミズムに基づいて、視点ごとに企業を取り上げて、分析を行います。実際にどのような分析を行うかは、本書でご確認ください。

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投資・財務のプロはC/F、B/S、P/Lの順に見る

投資や財務の世界で重要なのは、企業活動の把握ではなく、企業実態(価値)の評価です。企業分析のプロはC/F、B/S、PLの順で重要視します。なぜなら利益は会計という「ルールに基づいた評価」であるのに対し、C/Fは事実であり、「生もの」の数字だからです。

 

C/Fの見方

C/Fを見る上での最初の注意点は、キャッシュフローは長い期間で見ろ」ということです。1年や2年のC/Fは大きく波打つため、最低で5年間、できれば10年間の動きを見なければなりません。

  

営業と投資のC/Fの流れを見ると、企業が投資段階なのか、回収段階にいるのか一目でわかるようになります。フリーキャッシュフローをじっくり見ることで、粉飾や会計処理の不備など将来のリスクを予防することができます。

 

B/Sの見方

企業分析家や投資家は、B/Sを以下の4つに分解して考えます。

①事業用資産

②非事業用資産

③運転資本

④調達資本

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会計の世界のように流動・固定という考え方は、P/Lとの連動した分け方です。企業活動を期間成果と時点状態で把握しようという会計的発想が背景にあると山口氏は説明しています。

 

 

P/Lの見方

本書で扱うP/Lの分析は、他の本で書かれている内容と大差ありません。興味深かったのが、下記の図表です。 

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山口氏は、P/Lにおける分配の流れが「権利の大きさに反比例している」と説明し、分配の流れを理解しておくことが原理原則であると述べています。

 

図解でわかる分析・洞察

本書で最も面白いのが、ビジネスモデルの因数分解を分かり易く図解してくれる点です。

 

例えば、ミクシィの図表。

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 続いて創通の図表。

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事業を構成する要素を切り分け、各項目のドライバーを把握します。いわゆるユニット・エコノミクスを理解するということです。

 

ここまで簡潔に事業の構成要素を洗い出してくれる書籍はないと感じました。10年以上前の著作なので、Kindleもなく中古のみ販売ですが、財務・会計に疎い方にはお勧めです。

 

私の評価

評価:B

A:殿堂入り

B:本棚に残す

C:買いだが、一度読んだら売る

D:図書館で流し読む

E:時間の無駄 

 

デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座

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