あたりまえブログ

凡事徹底をテーマにしている中小企業の後継者が「大学時代の自分に伝えたいこと」を書いています。

承継と相続 おカネの実務(井上 和弘):経営コンサルタント業46年間の知見が詰まった一冊

恒例となりました井上氏の著書シリーズも6冊目!

 

本書のテーマは「承継」です。企業の経営者にとって「承継」というのは永遠の課題です。特に創業家にとって、自社株の承継が大きな課題となっていることは間違いありません。優良法人ほど純資産が厚くなり、自社株の評価が高くなり、相続税負担が上昇します。

 

本書では井上氏が立ち会った事業承継の実務経験から、実践的かつ効果的な知見が事例と共に紹介されています。税理士や弁護士などの専門家は、自信の専門領域を越えるような提案をしません。本書では彼らが絶対に提案してこないようなスキームが紹介されており、非常に勉強になりました。

 

本書では「高額退職金+私募債」「種類株の活用」が対策手法として紹介されています。

[目次]

 

高額退職金の支給+私募債の発行

高額退職金

本書では、事業承継をスムーズに進めるために、①高額退職金を支給することで、②株価を下げることの重要性を強く説いています。退職金は代表者が代表権を返上した時に支給します。一般的に、役員退職金の計算は以下の通りです。

役員退職金 = 最終月額報酬 × 代表取締役の在任年数 × 功績倍率

 

退任が近づいてから月額報酬を上げたり、功績倍率を上げることで退職金を少しでも高く貰おうとするオーナーが多いとのこと。本書では、この方法では税務調査で否認されるケースが多いため、以下の計算式に退職金規定を整備することを推奨しています。

役員退職金 = 最終月額報酬 × 役員職責係数 × 代表取締役の在任年数 × 功績倍率 × 労金加算(30%)

 

例えば、月額報酬が200万円、在任期間が30年、功績倍率が3xの社長が退任されたとします。通常ですと、1億8,000万の退職金しかもらえません。しかし、井上氏の計算式を使うと、仮に役員職責係数を1.3とした場合、3億円強の退職金を受け取ることができます。

 

私募債

先日の例で、退職金を支給した後の会社と後継者のことを考えてみましょう。それまで代表として支えてきた先代が会社を去っただけでなく、3億円ものお金が会社から流出した訳ですから、当面の資金繰りに窮することになります。借入をするにも、自己資本比率は低下しており、借入条件も悪化しているかもしれません。一方、退任した経営者が3億円を受け取った後に、「使い道がない」と思っていることも多々あります。

 

そうした課題を解決するのが、「私募債の発行」です。会社が少人数私募債を発行し、退職金を受け取った経営者から資金を調達するという手法です。私募債であれば、オーナーは預金金利より高い金利(3~5%)を受け取ることができ、会社の資金繰りの心配もなくなります。事務処理も全て社内で済み、比較的簡単なようです。

 

種類株の活用

2006年の新会社法では、内容の異なる複数の種類の株式(種類株式)の発行が認められるようになりました。本書では、種類株のうち「黄金株」「無議決権株式」「取得条項付株式」を自社株対策に活用することを推奨しています。

 

スキームとしては、ステップが2つあります。一つ目が、オーナーが保有する株式のうち、1株を黄金株(拒否権付種類株式)、残りの株を無議決権株式に変えることで、後継者に議決権を委譲します。次に、オーナー保有の無議決権株式に取得条項を付けて幹部に渡します。これにより、後継者は相続税の心配をすることなく、会社の支配権をえることが出来ます。

 

私も事業承継の本をたくさん読んできましたが、「こんなにうまい方法があるのか!」と驚きました。上手くいけば、自社株に掛かる相続税がゼロになるような信じられない方法です。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。いわゆる「相続対策本」では中々見ることのない内容ばかりだったのではないでしょうか。ご興味のある方は是非、本書を手にとって見て下さい。

また、詳しい実務については著者の井上氏が経営するアイ・シー・オ・ーコンサルティングのHPブログをご確認ください。

 

私の評価

評価:B

A:殿堂入り

B:本棚に残す

C:買いだが、一度読んだら売る

D:図書館で流し読む

E:時間の無駄 

 

承継と相続 おカネの実務

承継と相続 おカネの実務