井上氏シリーズの第4弾です。今回の「社内埋蔵金をお金にする知恵」は、過去にご紹介した3冊を纏めてエッセンスを凝縮した内容です。アーティストがアルバムを3つ出した後に、それを纏めたベストアルバムを出したようなイメージです。
裏表紙には井上氏がコンサルしてきたと思われる中小企業の経営者からの推薦文が書かれています。推薦文の中には、数年前にポラリスに100億円で売却したことが話題となった洋菓子スタートアップBAKEの母体である「きのとや」の長沼氏の名前も有ります。
[目次]
B/Sに隠れた埋蔵金を見つける
本書ではB/Sに隠れた現金を「埋蔵金」と称し、その在り処と掘り起こし方を丁寧に解説しています。本書では「埋蔵金」と表現が変わっただけで、原理原則は変わりません。肝は「不要な資産をオフバランス(たたむ・削る・変える)し、現金主義の高回転経営・キャッシュフロー経営を実現する」ということです。
埋蔵金の在り処(流動資産と固定資産)
本書では、「B/Sの左側にある資産はすべて「カネ」が「モノ」に変わった姿だ」と認識するところから始まります。そして資産の中にある流動資産と固定資産のどこに埋蔵金があるかを探していきます。
流動資産に隠れた埋蔵金
流動資産から埋蔵金を見つけるためには、「在庫」と「売掛金」を見ていきます。
在庫に隠れた埋蔵金
どんな会社でも「売れる商品」と「売れない商品」があります。在庫に隠れた埋蔵金とは、積み上がった「売れない商品」を現金化することで生まれます。そして、過剰な在庫を積み上げないために、販売実績と在庫実績を見比べて「黙っても売れていく(在庫がなくなる)仕組み」をつくっていきます。
売掛金に隠れた埋蔵金
中小企業は大手と比べると信用もなく、回収サイトが長い傾向があります。井上氏は現金決済、長くとも翌月末決済で回収することを推奨しています。そのためには、営業サイドに「回収は経理の仕事ではなく、営業の仕事だ」と強く指導していく必要があると主張します。
以上の施策で掘り起こした埋蔵金を借入金の返済に充てることで財務環境を改善することを目指します。
固定資産に隠れた埋蔵金
固定資産の埋蔵金を見つける上で重要なキーワードがあります。それは「減価償却」、特に「特別償却」です。減価償却は一定のルールに基づき、毎年資産を減額します。帳簿上の経費としてマイナスが生じますが、実際にキャッシュが流出する訳ではなく、キャッシュフローとして残ります。
井上氏は、売れる商品をつくるための新規設備投資は積極的にすべきとしています。そして設備投資を「特別償却」、あるいは「固定資産除却損」で落としていきます。
企業体力指数 = 総資産経常利益率(ROA) × 自己資本比率
後半では、企業体力指数という算式が紹介されています。収益性を測るROAと安定性を測る自己資本比率を掛け合わせ、企業の健全性を点数化しています。井上氏は以下の目標数値を設定しています。
・合格体力指数 300% = 10% × 30%
・目標体力指数 420% = 12% × 35%
・超優良企業 1,000% = 20% × 50%
皆様もこの指数を使って、ご自身の会社や投資先の健全性を確認してはいかがでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。これまでの感想をご覧になって井上先生の著書にご興味を持たれた方は、本書から入るのが良いと思います!価格もこれまでの3冊の1/10と安いのでお勧めです。
私の評価
評価:C
A:殿堂入り
B:本棚に残す
C:買いだが、一度読んだら売る
D:図書館で流し読む
E:時間の無駄

- 作者: 井上和弘
- 出版社/メーカー: 中経出版
- 発売日: 2011/01/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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